一世代前の立絵馬

以前の記事で「立絵馬」というものを紹介しましたが、最近、手向山八幡宮の一世代前の立絵馬をたまたま入手できました。


大谷幸康さんという方の筆になるそうです。現行のものがややカッチリした印象なのに対して、おおらかで温かみのあるタッチにほっこりします。

何だかテンション上がったので、思わずひさしぶりにブログ書いちゃいました。

個人的には、絵馬や郷土玩具って、骨董市などで見つけられるほんの少し昔くらいのものが一番好きです(単に古ければいいってわけでもなく、あんまり古すぎて色褪せていたりすると寂しいので)。ともすると今の時代には忘れ去られてしまいそうな、独特の野趣を感じられることが多いように思います。

普段の生活の中でも、ふと立ち止まったときに目に入ると、一時、気持ちがほぐれるような、この感じがたまらないんです。こういうものって。



ところで、何となく手向山八幡宮の立絵馬をスウェーデンの縁起物「ダーラナホース」と並べてみました。

どうです、この違和感のなさw

立絵馬はもっと北欧女子に愛されてもいいと思うんだ。

それにしても、スウェーデンでも馬は幸せを運ぶ存在なんですよね。模様の雰囲気なんかもどこか手描きの絵馬に近いところがあって、不思議な親近感をおぼえてしまいます。

絵馬は神社だけじゃない!

今でこそ神社にもお寺にも絵馬はありますが、実は平安時代にはすでに、お寺に絵馬を奉納するのは普通のことになっていました。神と仏を同じだとみなす神仏習合思想の中で、それはごく自然なことだったのでしょう。東寺や興福寺は、その先駆者的な場所です。

 

なかでも東寺では、お寺と絵馬とが古くから結びついてきたことを今に伝える行事が毎年行われています。それは弘法大師のご命日の4月21日に、東寺の重要な塔頭(たっちゅう)である灌頂院(かんじょういん)というところの、重要な儀式に使われる聖なる水を汲む井戸がある閼伽井堂(あかいどう)に、絵馬を掲げること。ここにも、絵馬と水神とのかかわりを垣間見ることができます。 この日だけ公開される閼伽井堂のひさしには、朱だけで描かれた三枚の絵馬が。朱は古来特別の呪力をもつとされる水銀の化合物で、水の神との関係も深いと言われています。向かって左が一昨年、右が去年、そして一番新しい今年の絵馬が真ん中。読経の響く中で大僧正が一気に描き上げるのだそうです。この絵の出来具合を過去二年のものと比べて、向こう一年の農作の吉凶が占われます。これを見るだけでも、充分ご利益をさずかれるとか。

 

東寺には、これにちなんだ縁起物の絵馬も。

 

(右は裏面)

 

手のひらにおさまるコンパクトなサイズで、お守りとして持ち歩くこともできます。これを持っていれば、水神と朱のパワーで邪気を祓って、気持ちも新たにハッピーな一年が過ごせるかも。

 

「絵」になる前に、立体の「馬」!

なぜ「絵」の「馬」で絵馬なのか。それはもともと、神様に生きた馬を捧げていたのが始まりだったから。神様の乗り物と考えられ、神聖視されてきた馬。雨乞いには黒い馬、晴れてほしいときには白い馬を、川辺で水の神に捧げて豊作を祈るという、まるでてるてる坊主のような風習もありました。それが生きた馬だと何かと大変なので、小さな板切れに馬の絵を描いたものへと簡略化されていったのです。こうした絵馬の原型らしきものは、古くは奈良時代の、かつては水辺だったという地層から出土しています。

 

ちなみに最も古い絵馬は、馬を描いた四角い板です。現在のいわゆる絵馬は、屋根のような五角形をしているものが多いですが、これは厩舎をかたどったもの。馬と関係ない絵柄であっても、馬の面影を残しているというわけです。

 

ところで、生きた馬の代わりとして絵に描いた馬が定着するまでには、過渡期的なものも色々ありました。そんな絵馬のプロトタイプを今に伝えているのが、こちら。

 

 

 

 

写真上の素朴なものは、茨城県東海村の村松山虚空蔵尊というお寺で出している立絵馬。「真弓馬」ともよばれる郷土玩具です。写真下は、奈良県奈良市の、東大寺三月堂近くにある手向山八幡宮の立絵馬。こちらは応神天皇(八幡神)の愛馬「あつふさ」をイメージしたものとも言われるだけに、雅な雰囲気があります。今でも立絵馬が手に入るのは、この2箇所だけ。

 

この他、藁や陶器などで馬をかたどった郷土玩具も、絵馬の原型を残すものではないかと言われています。また、今でも神社には、神馬として生きた馬を飼っていたり、木馬を置いていたりするところがあるので、探してみるのも面白いかもしれません。

 

絵馬といえば、馬!

さて、開始早々から脱線もはなはだしかったので、本筋に戻るとします。絵馬とは何なのかというところからお話するのが筋だったわけですが、まずは固定観念を外していただきたかったということで、前回までは護符としての絵馬を少々みてきました。そろそろスタンダードなところから始めていきましょう。これが絵馬の基本形かな、と思ってもいいようなものは、こんな感じです。

 

 

これは鶴岡八幡宮で出している、かなり丁寧な作りの、大判の絵馬です。お値段も2000円と少し高めなので、使い道を普通に考えるならば、願い事を書き込んで奉納するならだいぶ気合いを入れてするか、あるいは記念に持ち帰って飾るか、というところではないかと思います。

 

ここには、馬が一頭描かれていますね。少なくとも「絵馬」という言葉の由来は、ここからでした。馬を描いた一枚の板切れが、神様への捧げ物から、様々な要素を取り込んだメッセンジャーとして展開していくのです。最も古いものは、飛鳥時代にまで遡るとされています。現在では絵柄も用途もバラエティーに富んでおり、歴史的におおまかな流れを辿ることはたしかにできるのですが、とても一本道の進化を辿っているとは言い難いと私は思います。次回は、そんな絵馬というものの黎明を偲ばせる品をお見せします。

 

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鏑木麻矢

Author:鏑木麻矢
文筆家。著書「ニッポンのおみくじ」(グラフィック社刊)もうすぐ発売。2012年5月から2014年12月まで、㈱H.I.S.公式ブログとして「麻矢の不思議カワイイ!?ご利益モノがたり」連載。現在、当ブログ内にすべて再録。縁起物をこよなく愛する。約20年来、巷間の多種多様なおみくじを自らの足で歩いて独自に収集・研究中。絵馬コレクターでもある。かつて、仏像マニアのテレビ番組に出たことも。全ては神社仏閣・仏像巡り趣味から始まっている。旅と町歩き・路上観察、手仕事なモノ(郷土玩具、民藝)、美術鑑賞(月に最低2回位は美術館博物館に行くのが癒し)、古風なもの、レトロな雰囲気などが好き。何にせよ、知られざる面白いモノゴトを自分なりに発見していきたいです。他、天然石・鉱石やトランプ・占いカード等、気まぐれかつ雑多な収集癖あり。以前、下手の横好きでオペラを習ったこともあったり(今も観賞大好き)。何でもとことんハマるのが生き甲斐。

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