【再録】もうひとつのドーマンセーマンと、海女さんの神話の里 海士潜女神社

前回の「石神さん」の「相差(おおさつ)」からバスの終点「国崎(くざき)」まで足をのばすと、そこはまるで時間が止まっているかのような海辺の町。
2013年05月22日掲載分01
現役の海女さんが50戸100人はいらっしゃるというこの町、すれ違う人々のほとんどが普通に海女さんや漁師さんだったりします。
2013年05月22日掲載分02
上の写真では、干したワカメを取り外し作業中。

そんな町で、海女さんたちに厚く信仰されている神社がここ、海士潜女(あまかづきめ)神社。
2013年05月22日掲載分03

実はこの神社のお守りにも、ドーマンセーマンが描かれています。この地域の海女さんたちも持っている木札のお守りです。ダイビングや水泳をする人はぜひ身に付けてみて。海と水に関するあらゆることにご利益があり、身の危険から守ってくれます。
2013年05月22日掲載分04
「石神さん」お守りにもあった、五芒星と格子模様からなるドーマンセーマン。五芒星「セーマン」は一筆書きできることから無事もとの場所に戻って来られる、格子模様「ドーマン」はたくさんの目が魔物の侵入を防ぐと言われています。

2013年05月22日掲載分05

上の写真は、海士潜女神社の社殿。祀られているのは、海女の祖といわれる「お弁」という女性です。約二千年前、倭姫命(やまとひめのみこと)が天照大神(アマテラスオオミカミ)を祀るにふさわしい聖地を求める旅の道すがら、ここ国﨑へいらしたときのこと。出会った海女さん「お弁」が差し上げたアワビのあまりのおいしさに感動された倭姫命は、神宮のお供えとしてこの場所のアワビを毎年献上するよう定めました。

そのアワビにちなんだ海士潜女神社のお守りがこれ。
2013年05月22日掲載分06
「あわび貝のお守り」「健康長寿のお守り」などと呼ばれています。豪華な雰囲気が嬉しいですね。お守り袋の中には、本物の「熨斗鰒(のしあわび)」が入っています。アワビを延ばして干した「のしあわび」は、伊勢の神様の大好物。不老不死の妙薬ともいわれ、幸せが末長く続くようにと祈る縁起物。お守りを乗せている貝殻は、神宮に献上する「のしあわび」を作るときに出た貴重なものです。アワビの殻は、この地域の家庭で御供え物を盛るお皿として使われています。

この「のしあわび」、実は身近なところにも。お祝い袋などについている「のし紙」、今でこそ絵だけのものが多いですが、もとは「のしあわび」でした。
2013年05月22日掲載分07
余談ですが、今も本物の「のしあわび」を使った御祝儀袋を、日本で唯一、相差(おおさつ)の「兵吉屋」(http://hyoukichiya.com/)というお店が作っています。

海士潜女神社のすぐ近くには、「伊勢神宮御料鰒調製所」があります。
2013年05月22日掲載分08
ここで伊勢神宮に神様の食べ物として献上する「のしあわび」が作られます。

2013年05月22日掲載分09
上の写真は、薄く切って細長く延ばしたアワビを干す場所。干し上がったら、短く切り、決まった数をひもに通せば完成です。その工程や形などは、伝統として厳しく守られてきています。

この一帯は、「鎧崎(よろいざき)」と呼ばれる海に突き出た小さな半島のような地形。
地名の由来は、これまた倭姫命でした。

2013年05月22日掲載分10

「御料鰒調製所」から木漏れ日の中を少しばかり歩くと、記念碑があります。
2013年05月22日掲載分11
倭姫命がここで鎧を脱いだから鎧崎と言うんだそうです。思わずリラックスしてしまうほど素敵な場所、ということでしょうか。

2013年05月22日掲載分12
鎧崎灯台。このあたりは波の荒い難所として有名。
2013年05月22日掲載分13
それだけに、雄大な眺めが広がります。

こうして倭姫命の足跡をたどってみると、この地での海女さんとアワビのエピソードといい、二見浦の地名の由来といい(二見興玉神社参照)、彼女が神宮の場所として伊勢を選んだのは、もしかしたら「美しい・おいしい」が決め手だったのではと思えてなりません。

2013年05月22日掲載分14
上の写真は、鎧崎の全景。左のほうに見える、半島と接して整備された海岸が「前の浜」です。

2013年05月22日掲載分15
「前の浜」入り口には、海女さんが採ってきた天然ワカメを干すための棚が並びます。そのうしろに見える小屋は、海女小屋。海女さんが仕事の合間に休憩し暖を取る場所です。海女小屋のすぐ右わきの鳥居をくぐり階段を上れば、先ほどの「御料鰒調製所」。
2013年05月22日掲載分16

ここで海女さんが作業する様子を見たいなら、今年6月29日に行われる「御潜神事(みかづきしんじ)」へ。伊勢神宮に献上する「のしあわび」を1から奉製する神事です。普段は禁漁の神聖な場所「前の浜」で海女さんたちが一斉にアワビを採る姿は壮観。この日は、「のしあわび」を作る様子も屋外で公開実演されます。7月1日には、伊勢神宮から舞姫がやってきて海士潜女神社で神楽を奉納。毎年11月23日には、「前の浜」で2隻の船が競争する勇壮な神事「二船祭」も見逃せません。

付近には海水浴場もあるので、夏は特に気持ち良いですよ(海開きは7月中旬です)。鳥羽市内や二見浦などの宿に泊まれば、海の幸もたっぷり味わえます。この式年遷宮の年に、大自然と神話に彩られた「美しい・おいしい」伊勢・志摩のロマンをもっとディープに感じる旅へ、ぜひ相差(おおさつ)や国﨑(くざき)まで足を運んでみてください!

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●海士潜女神社、伊勢神宮御料鰒調製所など http://kuzaki.jp/ (三重県鳥羽市国崎町町内会)

≪アクセス≫
・JR/近鉄「鳥羽」駅すぐの「鳥羽バスセンター」より「かもめバス」で約60分、「国﨑(くざき)」下車徒歩5分
0599-33-7428 (国崎町内会・熨斗あわび保存会)

≪イベント≫
御潜神事 2013年6月29日(土)(日程は毎年変わります)
     海女さんたちのアワビ取りは午前9時から開始。
海士潜女神社例大祭 毎年7月1日
二船祭 毎年11月23日

テーマ : 神社・仏閣巡り
ジャンル : 旅行

【再録】女性の願いを叶える謎の女神 石神さん(神明神社)

伊勢・志摩をおとずれたなら今や絶対はずせない最強パワースポットとなった「石神さん」。今なお海女(あま)さんが多く住む海辺の静かな町「相差(おおさつ)」にあって、その一角はひときわ異彩を放つにぎわいを見せています。

2013年05月01日掲載分01

石神さんのある神明神社の境内は、森に囲まれた気持ちの良い場所。手水舎で手と口を清めたら、さっそくお詣りしてみましょう。

2013年05月01日掲載分02
石神さんは小さな祠(ほこら)ながら、その存在感は抜群。絶対忘れちゃいけないのは、周りに備え付けられているこの用紙に、お願いをひとつだけ書くこと。

2013年05月01日掲載分03
女性の願いなら必ず1つ叶えてくれるといわれています。
ここはじっくり考えて1つに絞るのがミソ。

2013年05月01日掲載分04
こうしている間にも、女性たちがひっきりなしに参拝していきます。

お願い事が書けたら、祠の鈴を鳴らしてお賽銭を入れ、そのわきの「願い箱」に用紙を折って入れてください。二礼二拍手一礼し、御神体に向かって一心に祈るべし!

2013年05月01日掲載分05
こちらが石神さんの御神体。海からやってきた不思議な石です。昔、ある元日の晩、この石に女神様が現れ、「女性の願いなら必ずひとつ叶えよう」とお告げを下されたとか。女神様はそのとき白い着物を着て、島田髷という江戸時代の大変ポピュラーな髪型をしていたそうです。そんな親しみやすい女神様は、相差の海女さんたちの心のよりどころとなりました。命がけの仕事に生きる海女さんたちを見守ってきた女神様は、これからどんな世の中になっても女性の強い味方なのです。

この女神様は、古事記に登場する海の女神にして初代天皇の母「玉依姫命(たまよりひめのみこと)」という神様だとされていますが、詳しいことは謎に包まれています。あるいは、「玉依姫」というのは神様をその身に宿す巫女(みこ/ふじょ)一般をさす名前だとも。いずれにせよ、海の彼方には神様の住む異世界があると信じられていたので、そこから来た石には神秘の力が宿るとされました。海の世界と現世を行き来する女性である海女さんにも、神と人とをとりもつ巫女のような特別な力があると思われていたかもしれません。

また、石が何か女性的な力をもつという信仰も各地にありました。石神さんの祠のある神明神社の境内を探検していけば、実は他にも、そんな謎に満ちた石たちに出会うことができます。

2013年05月01日掲載分06

神明神社の社務所の中には、かつて神様と仏様の区別があまりなかった頃の名残りで、仏像が祀られています。その足元の箱には…

2013年05月01日掲載分07

穴のあいた石がたくさん。これらは海女さんが海から採ってくるものだそうです。何らかの自然の作用で穴のあいた石を神様にお供えすると、耳・鼻の不調や女性特有の病を治すご利益があるといわれています。

2013年05月01日掲載分08
ちなみに、以前ご紹介した多度大社の境内にも、同じような信仰のある「美御前社(うつくしごぜんしゃ)」という場所があります。やはり自然に穴のあいた石を奉納すると、女性特有の様々な願いを叶えてくれるとか。

石にあいた穴は、女性のシンボルを表していると考えられています。これを人の手で作り出すような信仰も、江戸時代以前にはありました。
2013年05月01日掲載分09
上の写真は、神明神社境内の稲荷神社の前にある古い手水鉢。そのふちには、写真でわかるだけでもこれほど多くの穴が開けられています。これは「盃状穴(はいじょうけつ)」信仰といって、昔の人が個人的に特別な願いを込めて刻んだ穴だそうです。

こうして石と女性の神秘的な力に満ちている境内の中、今もって輝きを増していく石神さん。そのお守りにも、女性を全力で応援する不思議なパワーがこもっています。

2013年05月01日掲載分10
海女さんの磯着をイメージした麻製のお守り袋に描かれた網目状と星形の印は、「ドーマンセーマン」とよばれる呪術的な護符。近くにある青峰山正福寺の修験者から伝わったのではないかと考えられています。海女さんたちが、海の魔物から身を守り無事生きて帰ってくるために、実際に磯着に縫い付けて使っている文様です。

この柄を染め上げているのは、イボニシ貝から少量しかとれない「貝紫」という貴重な染料。紫が高貴な色とされてきたのも、このためです。そんな事情もあってしかも全て手作りというこのお守りは、作れる数が限られているので、朝のうちに参拝に行ったほうが確実に入手できるようです。

2013年05月01日掲載分11
このお守りのストラップ版には、石神さんの御神体が打ち上げられたのと同じ海岸に流れ着いた小石が入っています。この石にも、異世界の力が宿っているかも!?鳥羽の海で採れた本真珠つきです。美容・恋愛や災難除けなどに効く宝石。母性的な癒しと守りのエネルギーがあるといわれる真珠は、石神さんのイメージにもぴったり。

社務所には願いが叶ったからと神社にお返しされたお守りが、両手を広げても抱えきれないくらい山ほど届いていました。宮司さんも嬉しい悲鳴。「これは何かあるとしか思えない」と常々仰っています。アナタのお願い事も、きっと叶うはず!

神明神社では、毎年5月7日に「石神さん春まつり」が行われます。勢ぞろいして豊漁を祈願する海女さんたちの凛々しい姿は必見です。このお祭りの日取りは、月に三回ある海女さんの安息日に合わせています。安息日には、海女さんたちをねぎらって男衆が手料理をふるまうのだそうです。男になど負けずに、心技体ひとつで一家を支える海女さん。その美しさ・かっこよさに、思わず憧れてしまいます。

2013年05月01日掲載分12
石神さんの御朱印は、貝紫をイメージ。「朱」のない珍しい御朱印です。
次回も、引き続き海女さんに関わる神社を訪ねていきます。
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●石神さん(神明神社) http://www.toba-osatsu.jp/

≪アクセス≫
・JR/近鉄「鳥羽」駅すぐの「鳥羽バスセンター」より「かもめバス」で約45分、「相差(おおさつ)」下車徒歩7分
〒517-0032 三重県鳥羽市相差町1238
0599-33-7453

≪イベント≫
石神さん春まつり 毎年5月7日

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鏑木麻矢

Author:鏑木麻矢
文筆家。著書「ニッポンのおみくじ(グラフィック社刊)」発売中。2012年5月から2014年12月まで、㈱H.I.S.公式ブログとして「麻矢の不思議カワイイ!?ご利益モノがたり」連載。現在、当ブログ内にすべて再録。縁起物をこよなく愛する。約20年来、巷間の多種多様なおみくじを自らの足で歩いて独自に収集・研究中。絵馬コレクターでもある。かつて、仏像マニアのテレビ番組に出たことも。全ては神社仏閣・仏像巡り趣味から始まっている。旅と町歩き・路上観察、手仕事なモノ(郷土玩具、民藝)、美術鑑賞(月に最低2回位は美術館博物館に行くのが癒し)、古風なもの、レトロな雰囲気などが好き。何にせよ、知られざる面白いモノゴトを自分なりに発見していきたいです。他、天然石・鉱石やトランプ・占いカード等、気まぐれかつ雑多な収集癖あり。以前、下手の横好きでオペラを習ったこともあったり(今も観賞大好き)。何でもとことんハマるのが生き甲斐。

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