おみくじFAQ/ボツネタ集~そのルーツ、海外事情など~

この度、NTT Trace「おとなの補習時間」記事の監修を担当しまして、メディアからよく質問を受ける項目について大体は以下のリンク先にまとめていただきました。

全国のユニークおみくじも公開!
毎日を楽しくするおみくじガイド

↑ごく一般的なおみくじQ&Aです。クリックしてお読みください。

ですが、ここでボツになった雑学も色々ありまして、これもまたよく質問されることばかり。
もったいないので、当記事に載せます。


さらに、私がおみくじについて何か書いたりメディアを監修したりする際の基本的な考え方についても、別枠にまとめて書いてみました。
おみくじの心得などへの私見
↑というわけで、こちらも是非クリックしてお読みください。

おみくじの効果的な引き方。本気なら生年月日を念じるべし!

↑こちらも、皆様興味を持たれることのようなので、自分なりにまとめておきました。


おみくじに関して私に何か問い合わせたいという方は、まず当記事と上記リンク先を必ず熟読してください。お問い合わせを頂くたびにその都度調べ直したり考え直したりするのは大変ですし、記事ごとに当方の考えなどがぶれたりしてもいけないので、予めまとめておきました。双方の手間を省くためにも、切に切に、お願いいたしますm(_ _)m


Q おみくじと占いとは違いますか?
A ぶっちゃけ、おみくじは占いの一種です。


宗教家などの立場によっては、占いよりも重いもの・別格なものと捉えることがありますし、それを否定するものではありません。そういう意味では、神仏の託宣に近いといえます。ですが、そもそも占いというものの成り立ちとは何だったでしょうか。天地自然や神々からのメッセージの受け取り方(託宣もそのひとつですね)をシステマティックにしていくこと、その理論を洗練していくことというのが、とりもなおさず占いの発展の歴史そのものということになります。そう考えると、おみくじも占いの一種、それもかなり原始的な形として位置づけることが可能です。

最も原始的な占いのひとつに、動物の骨を焼いてできたひびの形を読み取るというのがあります。これは日本と中国に共通して見られますが、細かいやり方などが違うので相互の影響関係はないと言われているらしいです。神々の意思を問う方法としては他にも様々な神事があり、占いと密接な関係がありますが、こうした儀式的なものをだいぶ簡略化させたのが「くじ引き」です。日中ともに、王位継承など、重要なことを決めるのに使われていました。「くじ引き」的な占いを発展させると、「おみくじ」になっていくというわけです。なお、くじ引き系の占いの中でも、中国の易経/易占いは、特に精緻な理論を誇っています。

ですからおみくじも、易占いやタロットなど偶然性を利用する占いと同種と考えるのがよいでしょう。特に、おみくじのルーツを考えると易占いの影響は無視できません。読み取り方や有効期限など、占いとしての考え方も、おおよそ易占いの思想に準じるのが適切と思います。上記リンク先の記事も、この考え方をもとに監修しております。


Q おみくじのルーツは?
A 日本系と中国系の二系統を考えるとよいです。


これはなかなか複雑で難しい問題です。メディアから質問を受けても大抵ボツになっているのはそのためなのかもしれません。

◎中国系

お寺でよく見かける漢文のおみくじは、江戸時代にポピュラーになったものです。漢文ということは、当然、中国から渡来したということ。現在最もよく使われている「元三大師百籤」は、良源大僧正という平安時代の天台宗の高僧が創始したといわれていますが、実際にいつ頃伝わったものなのかはわかっていません。これについては信仰的・伝説的な要素が強いので断定的な物言いは控えたいところですが、確かなのは、江戸時代に川越の喜多院という天台宗のお寺から一気に広められたということぐらいです。

江戸時代には、この他にも色々な種類の漢文のおみくじが流行していました。そのほとんどは中国から長崎を通じて伝わったものですが、中には日本オリジナルの漢文おみくじもあります。現在、比較的よく見られるものに日蓮宗の法華経おみくじがありますが、これも実は日本産。他の宗派を批判するのがアイデンティティーな日蓮宗としては、おみくじだって独自なものでいこうじゃないか、ということでやはり江戸時代に作られたそうです。当時は、中国っぽいものが最先端でオサレと思われていたので、それらしいものが創作されたというわけ。

中国では、「観音籤」や「関帝籤」などをはじめ、様々な種類のおみくじが発展してきました。これらと易占いの関係は、はっきりと系統立てることはできないのですが、四書五経のひとつとして易経が長く重んじられてきた文化的背景を考えると、やはり思想的に切り離せないものです。ちなみに、易占いも江戸時代の日本で流行し、のちに大家といわれる易者が何人か出ています。易占いそのまんまのおみくじもあり、現在、浅草酉の市で有名な鷲神社(東京都)、白山比め神社(石川県)で引くことができます。

◎日本系

江戸時代に舶来のおみくじが流行する以前から、日本にもおみくじ的なものはありました。中世までは、何か重要なことを決めるときや自分の命運が左右されるときなどに、自分で選択肢を書いた「くじ」を作り、寺社に詣でて祈りながら引くというやり方が一般的だったということです。明智光秀が本能寺の変を起こす前に引いたというおみくじも、この形式といわれています。要は、江戸時代におみくじブームが来るまでずっと原始的な形のままだったという・・・。

ですが、この他にもおみくじのルーツといえるものがあります。
それが、「歌占(うたうら)」と「辻占(つじうら)」です。

まず、「歌占」は、和歌を使った占いです。これも古代から行われていて、当初は巫者に和歌の形で託宣をさせるものでした。これが室町時代には、和歌をいくつか紙に書いて弓の弦に結び付け、そこから選び取るという形式に。とはいえ、紙に書いて引くやり方自体はそれ以前からあったようです。江戸時代には、百人一首占いが流行しました。これ、今リメイクしたら売れるんじゃないの?って思います。百人一首覚えるのが嫌じゃなくなりそう。ともあれ、古来、和歌は神々とのコミュニケーションの手段として呪術的なパワーのあるものとされてきました。現在、神社のおみくじでよく和歌が使われているのも、こうした背景を意識しているからです。

ちなみに、日本のおみくじ界で約7割という最大のシェアを誇る「女子道社」(1906年設立)製のおみくじも、この会社を経営する二所山田神社(山口県)の宮司さんが精進潔斎した上、神前で啓示を受けて詠んだ和歌で作られています。

もうひとつ、「辻占」は、夕暮れ時に辻(十字路)に立って、道行く人の様子や話し声などからインスピレーションを得て占うというもの。万葉集の時代から行われていました。現在は、大阪府の瓢箪山稲荷神社に体系化されたやり方が伝わっており、実際に体験することができます。

ここから転じて、江戸末期に花街などで「辻占」と称するちょっとしたおみくじが売られるようになりました。これをお菓子の中に入れた辻占菓子も、宴の席で喜ばれ、またお正月の縁起物として現在まで伝わっている地域もあります(主に石川県など、北陸地方に多いそうです)。フォーチュンクッキーのルーツとして知られる辻占煎餅も、この一種。辻占煎餅は現在でも観光地のお土産などによくありますが、特に京都の伏見稲荷の参道ではたくさんの種類が売られています。お店によっては今でも手刷り風の占いを使っていたりと、味わい深いです。かつては役者絵が出てくるものもあり、お菓子のオマケカードっぽくコレクションする人もいたとか。描かれている文句は、ちょっと幸せになるような縁起の良い言葉、花街に粋を添える艶っぽい文言、「点取り占い」を彷彿させるようなシュールな謎かけなど、種類によって様々。

日本人が軽いゲーム的なノリでおみくじを引くメンタリティの文化的ルーツは、むしろこの辻占にあるのではないかと私は思います。中国式のおみくじは、もっと真剣で信心深いですから。辻占菓子の中には、占い結果として小さな土人形など縁起の良いマスコットが出てくるものもあるので、最近流行っているオマケつきおみくじの精神的ルーツもこっちではないでしょうか。


いずれにせよ、硬軟とりまぜた今の日本のおみくじは、日本系・中国系ともに、こうした様々なルーツがゆるやかに絡まり合って形作られてきたということになります。また、どれも江戸時代の占いブームでブレイクしたものが直近の先祖に当たるというのも興味深いです。江戸時代の流行り神、巡礼、占いなどといった様々な民衆的ブームは、今の日本のスピリチュアルブームにも似たところが多くて、親近感を抱いてしまいます。


Q おみくじを連続で引くのは三回まで、なぜ?
A 俗説にすぎませんが、根拠らしきものはあります。


上記リンク先の記事でも、私の立場としては基本的に「何回引こうが個人の自由、気の持ちよう」なのですが、色々調べているうちに、「おみくじを連続で引いてもいいのは三回まで」とよく言われている根拠とおぼしきものがいくつか出てきました。ちょっと面白いので、ここに載せておきます。

・江戸時代に流行ったおみくじの1つに「天満宮歌占六十四首」というのがあり、1~4の数字が書いてある棒を三回引いて、出た順番の組み合わせで占うものだった。

・先ほど述べた、紙に書いてあるのを引くタイプの「辻占」には、三回引いて、出てきた言葉を自分なりにつなげて占うという遊び方がある。

・明智光秀が本能寺の変を起こす前に、おみくじを三回引いたと言われているが、定かではない。むしろ後世に書かれた軍記物などによる脚色と思われる。

このあたりから、なんとなく「三回まで」が一般的になっていったのかもしれません。

ただ、結果が「気に入らないから」という理由での連続引きは良くないです。ついついやってしまうこともあるかもしれませんが、そんな時って、大体同じような感じの内容ばかり出てくるような気がしませんか?せいぜい三回くらいで潔く受け止めようよ、ということにもしておきたいと思います。


Q おみくじの海外事情は?
A 華僑が圧倒的に強いです。


まず、海外におみくじはあるのか、ということですね。そもそも情報が少ないので、私の知る限り、調べのついた限りではありますが。中国と東南アジアにはあります。あとはわかりません。どうやら、世界の中でも日本民族と中国民族が特におみくじ好きみたいです。

おみくじに対して、最も信心深く、かつ最も盛んなのは、台湾と思われます。その真剣さ・熱気は、横浜中華街の関帝廟やマ祖廟で台湾式のおみくじを一度体験してみれば肌で感じられるはずです。台湾では、神仏を祀る廟でおみくじのある所の近くには、籤解釈者というおみくじ解説のプロが店を出していたりするほどですし、おみくじを使って漢方薬の処方箋を決める習俗まであったとか。

どうやら華僑の強い国では大抵おみくじが見られるようで、国や地域ごとにローカルルールなど細かな違いはあるようですが、東南アジアではほとんどの国にあります。私が実際に行ったことがあるのはタイだけですが、タイのおみくじは割とゆるい感じです。日本と同じように串を引くタイプと、電子ルーレット式(←自販機ではない!)を見ました。どちらも、出てきた番号の紙を自分で取ります。カンボジアは、本のページをえいやっと開く式らしいです。あとは具体的なこと知りませんが、とにかくあるにはあるようです。


それと、一応欧米っぽいおみくじ的なものとしてはフォーチュンクッキーがあります。が、これも前述の通り、日本の辻占煎餅がルーツ。大正時代に日本人がアメリカ向けにアレンジして売り出したものが、いつしかアメリカの中華料理店で広まりました。日本民族と中国民族、どんだけおみくじ好きなのって感じですね!



以上、参考文献などについては
おみくじ参考文献ゆるゆるレビューをお読みください。



2016.9.19.追記
これまでのおみくじに関する記事をまとめたり私見を書いてみたりしたので、↓こちらもぜひお読みください。
【雑感・まとめ】おみくじについて。



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なお、メディアからQ&A的によく質問されるにもかかわらずボツになった項目を次のエントリで解説します。記事アップまでもう少々お待ちください。

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鏑木麻矢

Author:鏑木麻矢
文筆家。現在、初の著書を執筆中。2012年5月から2014年12月まで、㈱H.I.S.公式ブログとして「麻矢の不思議カワイイ!?ご利益モノがたり」連載。現在、当ブログ内にすべて再録。縁起物をこよなく愛する。巷間の多種多様なおみくじを収集・研究中。絵馬コレクターでもある。かつて、仏像マニアのテレビ番組に出たことも。全ては神社仏閣・仏像巡り趣味から始まっている。旅と町歩き・路上観察、手仕事なモノ(郷土玩具、民藝)、美術鑑賞(月に最低2回位は美術館博物館に行くのが癒し)、古風なもの、レトロな雰囲気などが好き。何にせよ、知られざる面白いモノゴトを自分なりに発見していきたいです。他、天然石・鉱石やトランプ・カード等、気まぐれかつ雑多な収集癖あり。以前、下手の横好きでオペラを習ったこともあったり(今も観賞大好き)。何でもとことんハマるのが生き甲斐(悪癖?)。

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