中野区立歴史民俗資料館・絵馬展レポ

中野区立歴史民俗資料館で開催されている絵馬展と、そのギャラリートークやワークショップに行ってきました。

2年前にも同様の企画がありましたが、当時から所蔵していた小絵馬の数は約400枚。それが今回の展示に当たって、年季の入った素晴らしい収集家の方から絵馬やレアな資料などの寄贈を受け、大幅に増えた所蔵絵馬数は実に1200枚以上。全国屈指の、絵馬に強い博物館となりました。また、絵馬の展示というと、絵画の1ジャンルとして寺社で大事に保管されてきた大きく華やかな大絵馬を扱うところが多いですが、そうではなく一般庶民の個人的な願いが込められた素朴な小絵馬をこれだけ膨大に保管・研究・展示している施設は大変貴重です。まさに絵馬好きにはたまらない場所。

会場入口
展示会場入口の様子。スタッフさんが作った馬のキャラクターが可愛いです。

拝み絵馬製作過程

手描きの拝み絵馬の製作過程を10段階以上に分けて見せる展示も。こういった絵馬は、代々伝わる型を当ててステンシルのように何段階か塗り重ねてから、細かいところを手描きで加えて作られています。

各地の小絵馬は、絵馬の元祖というべき馬の絵、祈願者の分身として拝む人物を描く拝み絵馬、親子の姿や豊穣のシンボルなどを描く子宝・安産祈願の絵馬、病気平癒、その他様々な願い事の絵馬と、大きく5つに分けて展示。その中で、ちょっとイイなあと思うのをご紹介してみます。

拝み少女
拝み絵馬の中で一番かわいかったもの。女の子が可愛いのもさることながら、絵馬の中で絵馬を持ってるところにぐっときました。いっそ無限ループしてほしいぞ(笑)。

白なまず(福岡)
「なまず」とよばれる皮膚病の平癒祈願。色が白いのには、美肌になりたい気持ちも入っているかもしれませんね。それにしても、表情が愛らしすぎます。今回のゆるキャラ度ナンバーワン。

しゃくし
「杓子(しゃくし)」の絵を描いて、「癪止(しゃくし)」と駄ジャレで祈願。昔の絵馬を見ていると、現代の絵馬の世界では忘れられているような駄ジャレが色々と発掘されて楽しいです。

土佐の障子絵馬
土佐名産の和紙の障子紙を木製のフチに張った、珍しい障子絵馬も。破れやすそうな素材にもかかわらず、今から75年も前のものがこんなにキレイに残っているなんて感激!


昭和から現代までの、枠がなかったり印刷だったりする絵馬も、壁一面を使ってたくさん展示されていました。その中でも面白いのが、「郵便絵馬」というもの。

郵便絵馬
右のほうに「はがき絵馬」って書いてあります。実は昭和初期には、こういった絵馬をポストカードがわりに、裏に切手貼って宛名やメッセージ書いて、そのままポストにポンで送っちゃうというのがブームだったそうで。

はたはた
各地の名物や、名所の情景を描いてあるものが郵便絵馬には最適。

こけし
こういうのとか、どんどん送っちゃうといいと思うんだ。こけしブームだし。(この絵馬と全く同じものが今も売られているかはちょっとわかりませんが…ゴメンナサイ。でも探せば似たようなのはあるかも!?)

いずれにせよ、どこか旅行して神社仏閣に行ったときに、ちょっとイイ感じの絵馬が売ってたらポストカードがわりに送ってみたりすると、なかなかサプライズな感じでオサレなんじゃないかと思います。横14㎝くらいの一般的な大きさの絵馬なら、120円切手を貼れば普通に送れちゃいますよ。

中野区立歴史民俗資料館でも、午年だし、そのまま年賀状として送る用の絵馬を作っちゃえ~!な「絵馬風年賀状作り」ワークショップが行われました。絵馬風っていうか、まんま絵馬なのがミソです。めざせ郵便絵馬復活。展示されている馬の絵馬をいくつかコピーしたプリントを使い、好きな絵柄を選んでトレース→色塗り、という感じで作ります。

馬(茂原)
私はこの茂原の絵馬のコピーから作ってみました。


こんな感じで、できあがり。筆のコントロールが悪いのは気にしちゃダメだ。
量産してたくさん送るなら、シルクスクリーンや消しゴムはんこで作ってみるのもアリですよ。お年玉付き50円切手とプラス70円分を貼って、いざ送りまくるのだっ!


さて、ちょっと脱線しましたが、今回の絵馬展、一番の見どころは何と言っても、カラフルで楽しい、しかもレアな資料類です。なぜレアなのかというと、すべてのページが手描きだったり、とても細かい多色刷り版画だったりして、一冊につき、せいぜい20~30部くらいしか作れなかったからだそう。

宮尾しげを絵馬集
上は「宮尾しげを絵馬集」。大正~昭和初期に活躍した漫画家の宮尾しげを氏が、相次ぐ戦災で古くからの絵馬や資料が消失していく中、全国の絵馬師をたずね歩いて、絵馬師自身にページに直接絵を描いてもらったもの。自らも家が焼けたりする苦難の中、こうして絵馬の伝統を残そうとする行動力に脱帽ものの、凄まじく貴重な資料です。

もうひとつは、「田中緑江絵馬図集」。
田中緑江絵馬図集・愛知の馬
絵馬そのものの写真かと思ってしまいそうですが、違います。紙に描いてあるんです。
こちらは版画とのことですが、精密すぎてとてもそうは見えず、ただただ驚くばかり。
田中緑江絵馬図集・若狭の拝み
木目などがとてもリアルで、トリックアートばりに目をパチパチしたくなります。とにかくこの人、絵が上手すぎです。
田中緑江は、同じく大正~昭和初期の京都の郷土史家で、こうして全国の絵馬を写し、それをめぐるエピソードを記録しまくったすごい人。もはや絵馬好きにとってネ申といっていいレベルです。
田中緑江絵馬図集・豊川稲荷の賭博断ち
絵馬の絵柄を記録するだけでなく、奉納されたままの状態を写しているというのも「田中緑江絵馬図集」の大きな特徴。上の「博打をやめたい」祈願には、奉納者の性別・生まれ干支が書き加えられています。

今はもうどこにも残っていないこうした絵馬を実地調査できたなんて、収集家・愛好家として超超後発組の私にとってはもう、うらやましくてたまらないんですが、こうした先人の成果に感動するとともに、絵馬へのさらなる興味を駆り立てられました。中野区立歴史民俗資料館の学芸員様方、また寄贈者様方、大変貴重で興味深い展示をありがとうございます。

この企画展は今週末(2013年12月8日)までなので、興味のある方はお急ぎを。
とはいえ、この博物館で1~2年ごとに開かれている恒例企画です。それに年々パワーアップしているようなので、次回はさらに期待できそう。また、毎年ひなまつり近くになると、もうひとつの恒例名物企画「おひなさま展」が行われるので、そちらも必見です。
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鏑木麻矢

Author:鏑木麻矢
文筆家。現在、初の著書を執筆中。2012年5月から2014年12月まで、㈱H.I.S.公式ブログとして「麻矢の不思議カワイイ!?ご利益モノがたり」連載。現在、当ブログ内にすべて再録。縁起物をこよなく愛する。約20年来、巷間の多種多様なおみくじを自らの足で歩いて独自に収集・研究中。絵馬コレクターでもある。かつて、仏像マニアのテレビ番組に出たことも。全ては神社仏閣・仏像巡り趣味から始まっている。旅と町歩き・路上観察、手仕事なモノ(郷土玩具、民藝)、美術鑑賞(月に最低2回位は美術館博物館に行くのが癒し)、古風なもの、レトロな雰囲気などが好き。何にせよ、知られざる面白いモノゴトを自分なりに発見していきたいです。他、天然石・鉱石やトランプ・占いカード等、気まぐれかつ雑多な収集癖あり。以前、下手の横好きでオペラを習ったこともあったり(今も観賞大好き)。何でもとことんハマるのが生き甲斐。

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