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東大寺二月堂(奈良)・お水取り

お水取り・表

これが絵馬掛けの格子にさがっているのを見た瞬間、私は吹き出した。

なにしろ、とりあえず何の絵なのかわからない。
しかも小学生の男の子ががんばってお習字したけどつぶれちゃったような文字。
絵も、へろっとしているのにとにかく勢いがいいというか、子供の絵みたいだ。
誰かがその場で描いていったものかと思ったが、そうではない。
よくみれば印刷(シルクスクリーン?)なのがわかるし、同じものが周りに掛かってもいる。

それにしても、不思議な絵だ。
なんか火が燃えてるというのは、まあわかる。
「火防鎮護」というくらいだから、そうか、これは火事か。
パニックしつつも必死で消火活動を行っているところか。

てな具合に納得しかかったところで、落ち着いて考えなおす。
そう、ここは二月堂。二月堂といえば、「お水取り」である。
燃えさかるたいまつを掲げて階段を駆け上がる勇壮な儀式だ。

お水取り・裏

ていうか、こうやって裏にでも二月堂って書いてなくてこれだけポンと出されたら、なんだかわかんないよね。

だが、絵馬だからこそ、それでいいんだと私は思う。
もとより絵馬は、いわゆる上手な絵を描くことが目的なのではない。
絵心のあるなし、上手い下手に関係なく、とにかく自分の願いを表現できればいい。
どこまでも自然体で充分成り立ってしまうというのが、絵馬ならではというわけ。
そんな感じで狙っていない天然の脱力な絵を色々と見つけられるのは、絵馬をみていく楽しみのひとつだ。

もちろん、この絵馬はちゃんとしたプロの画家がデザインしたものだし、一見すると脱力系のようでも、きちんとした表現を狙っているのだろう。子供の絵というのは、まさに芸術の原点だともいうではないか。

なんも考えてないような自然体のプリミティブなタッチでありながら、そのためにかえって、炎をコントロールしながら全力疾走する激しさが純粋に凝縮されて伝わってくる。そんなところがいかにも絵馬らしくて、良い絵柄だと思う。色んな意味で(笑)。これだけの気迫があれば、火事にも余裕で勝てそうだ。
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鏑木麻矢

Author:鏑木麻矢
文筆家。著書「ニッポンのおみくじ(グラフィック社刊)」発売中。2012年5月から2014年12月まで、㈱H.I.S.公式ブログとして「麻矢の不思議カワイイ!?ご利益モノがたり」連載。現在、当ブログ内にすべて再録。縁起物をこよなく愛する。約20年来、巷間の多種多様なおみくじを自らの足で歩いて独自に収集・研究中。絵馬コレクターでもある。かつて、仏像マニアのテレビ番組に出たことも。全ては神社仏閣・仏像巡り趣味から始まっている。旅と町歩き・路上観察、手仕事なモノ(郷土玩具、民藝)、美術鑑賞(月平均2回以上は美術館博物館に行くのが癒し)、古風なもの、レトロな雰囲気などが好き。何にせよ、知られざる面白いモノゴトを自分なりに発見していきたいです。他、天然石やらトランプ・占いカード類やら喫茶店マッチやらと、気まぐれかつ雑多な収集癖あり。以前、下手の横好きでオペラを習ったこともあったり(今も観賞大好き)。気になったらとことんハマるのが生き甲斐。

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