【再録】天地の恵みと人の情熱、魂のアートにタッチ! 飛騨開運乃森大七福神

円空という仏師の名前をきいたことがありますか?江戸時代の人ですが、数年に一度は東京の美術館や博物館で展覧会が開かれ話題になるくらいの人気者です。素材となる木の自然のままの姿を生かしたワイルドな作風は、日本の神仏像彫刻の原点でありながら、現代美術にも多大な影響を与え続けています。

そんな円空が生涯で最も多くの作品を残した土地、そして古代より木工技術のすばらしさで名高い飛騨では、円空の技法を忠実に再現する「円空彫り」を専門に行う彫刻家が昭和の頃から活躍し、現代まで受け継がれてきました。

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上の写真はそのパイオニアの一人、中村円正さん作の巨大な不動明王像。円空をまだ知らない人は、大体こんな感じと思っておけば間違いないです。さて、この像が納められているのは、「飛騨の里」というメジャー観光スポットのすぐ隣、「飛騨開運乃森大七福神」(下写真)の右側の階段を上ったところにある細長い建物。木のうしろに隠れてしまっていますが、このスケール感、わかるでしょうか?
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そしてこの奥に待ち受けているのは、日本一巨大な木造の七福神。先ほどの中村円正さんと、「甚五郎彫り」が専門の山村佐藤兵衛さん、そして身を削って2人を支援し続けた初代オーナー倉坪信雄さんの、人生を捧げた汗と涙と夢の結晶です。荒々しい円空彫りと、これまた飛騨にゆかりのある伝説の名工「左甚五郎」をルーツにもつ繊細な甚五郎彫りの壮大なコラボレーション。この超大作を、とくとご覧あれ。

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開運乃森には、広大な自然林の中、合掌造りで有名なあの白川郷から移築した江戸時代の米倉が立ち並びます。この中に一体ずつ、七福神が納められているというわけ。それでは、入口に近いほうから順に巡ってみましょう。



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まずは、余裕のある暮らしをもたらし心をおおらかにしてくれる布袋さん。高さ3m50cm、そしてこの横幅。いきなりこの重量感は圧倒的!どのお像も、樹齢1000年の巨木一本から彫り出されています。しかも、生きている木を切り倒してくるのではなく、埋もれ木を使っているので地球に優しいんです。だから、これだけの大きさのものを見つけてくるだけでも大変なこと。すごい!なおバックに貼ってある手描きの馬の絵は、飛騨独特の福を呼び込む開運アイテム「紙絵馬」です。これも大きい!

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布袋さんの足元には、願掛けしゃもじが。七福神すべてにこのコーナーがあるので、願い事に合わせて好きな神様に奉納してみては。



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お次は勝負の神様、毘沙門天。足は木の根元そのままです。御神木の中から神様が現れてくる瞬間をとらえる、日本古来の神仏像彫刻の精神が見事に体現されています。

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高さ7.5mもあるので見上げてもなかなか見えない、引き締まった力強いお顔をアップで。

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後ろはもう、巨木そのもの。



ところで、何と言っても嬉しいのは、ここの七福神像は全てが間近で触り放題ということ。後ろにだって回れちゃう。どこかの誰かみたいに感動のあまり抱きついちゃったって誰も困らない、むしろ推奨って感じです。仏像好きにとって、まさに夢のような空間。これは穴場ですよ。写真だって撮り放題。五感を全て駆使して、知る人ぞ知る傑作群を味わい尽くせっ!



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並んで、美と幸運の女神、吉祥天も同じく高さ7.5メートル。吉祥天は毘沙門天と夫婦なので、縁結びにもご利益ありそう。やはり背の高い木を生かした形で後ろがなめらかなので、この2体は特に抱きつきたくなります。

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いかにも円空風の、空中から湧き上がるような足元の雲模様が神秘的。

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色を塗らずとも華やかで、重厚感があるのになぜか軽やかな羽衣の造形感覚には、日本橋三越にある佐藤朝山の高密度でカラフルな天女像にも通じるものを感じます。

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伝統と斬新さを併せ持つ、これらの作品はすべて木の形から天啓のようなインスピレーションを得て彫り出されたもの。たとえばこの吉祥天なら、木の中に舞い降りる天女の姿が見えた、という具合です。これって、まるで夏目漱石「夢十夜」の運慶。でも夢じゃなくて、仏師/彫刻家にとってはこれがリアルな感覚なのでしょうね。



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先の2体に次いで背の高いのが、長寿と健康の神様、福禄寿。6m50cmあります。ちなみに、通常の七福神と違って吉祥天がいるぶん、寿老人はいません。仙人風おじいちゃんキャラがかぶるので女神様と入れ替わるパターン。繊細で慈愛に満ちた、素敵な笑顔です。

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この福禄寿像の何がすごいかというと、台座から杖に沿って、木がばっくり裂けていること(上の写真に注目!)。それなのに、よほど注意して見ないと気付かないくらい、全体としてまったく破綻のない造形。木そのものに神性を見出す平安時代からの神像彫刻、あるいはその感覚の延長上にある円空の神仏像では、たとえ木が曲がっていようと裂けていようと、無理に変えようとはしません。造りたい形よりもそういった木の特徴を優先して、あるいはより違和感なく取り込んだり、個性として生かしたりと、ありのままを尊重してきました。これを近代にこの巨大さで実現してしまう匠の技と心意気には、ひたすら驚くばかりです。

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福禄寿像の下には、造像にとりかかる前に試作した小さな雛形が。ちょっとカワイイ。このラフ具合も、円空っぽいです。こちらも体の真ん中に裂け目が入っていますね。



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木の形が思いっきり生かされているのが、知恵と芸術の女神、弁財天。光背から伸びる大きな枝の先に、「福徳」の文字が刻まれています。雲の中をうねる龍の台座もすべて、もちろん同じ一本の木です。この龍の姿も、もともと原木に浮かんでいた形を整えて彫り上げたとのこと。

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彫り出す前の形が想像できる後姿。力強い大枝は大自然の生命力そのもの。

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裸弁天なので、とてもセクシー。世界と命の美しさを全身で歌うエネルギッシュなお姿だと思います。

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恍惚にして憂いを秘めたお顔の表情が魅力的です。



さて、いよいよ一番奥に鎮座ましますのは、親しみやすくオールマイティな福の神コンビ、えびす様と大黒様。
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2神を納める倉の傍らには、湧き水が。
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七福神を作り始めてから1700日目に啓示によって湧き出た、奥の院「神泉宮」から引いている、幸運を呼ぶ水です。遠くからボトル持参で汲みに来る人が後を絶たないとか。

倉の中に入って、えびす様大黒様に大接近。
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一本の木を2つに割って造られた、双子のような神様たちです。混じりっ気なしの笑顔が、一目みただけで幸せな気分にさせてくれます。

壁には、制作途中に撮られた2人の作者、中村円正さんと山村佐藤兵衛さんの記念写真が飾られていました。
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宗教ではなく、夢とロマンがあって誰もが心やすらぐ場所を造りたいという初代オーナーさんの想いで、最初に生み出されたのがこの2神。やがて大黒様からの「わしの仲間を増やしておくれ」という夢のお告げを受け、七福神を揃えていったそうです。最後まで完成するには15年の歳月を要し、総製作費は実に3億円。幾多の苦難を乗り越え、すべてを懸けて造り上げた魂のふるさとのような開運乃森には、並々ならぬ情熱でたぐり寄せられた数々の奇跡が詰まっています。

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その中でも一番の要となるのはやはり、素材となる木との出会い。こちらの大きな袋をかついだ大黒様、後ろに回ってこの袋にさわると開運まちがいなし!とのこと。はたして、そのココロやいかに…?これには、実際に見て触れればわかる秘密がありました。

そんな後ろ姿が、こちらです。
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なんと袋は、天然のままの巨大な木のこぶそのもの。触っていると、この奥には木のうろが隠れていることもわかり、母なる大地に包み込まれるような奥深いぬくもりを感じられます。大自然が計り知れない年月をかけて生み出したアートとも言うべきこの形の木に偶然出会ったこと、そしてそこに大黒様の姿を見出したことこそが、運命の始まりだったのです。「神は創造の原点にあり人は想像の接点にある」という、初代オーナーさんの手記を締めくくる言葉が現実のものとして迫ってきます。こぶは「ヨロコブ」。この袋の中にはまさしく、人の力と天のはからいが織りなす不思議な縁の積み重なった歓びがあふれています。ぜひ両手でなでて、直接感じて、奇跡の幸運をチャージしていってください。必ず何かしら胸にこみ上げてくるものがあるはずです。

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地元では、大黒様の写真を撮ったら印刷して財布に入れると金運が良くなる、なんて言い伝えも。写メして携帯の待ち受けにしても、いいことありそう。私は、上の写真を高解像度でPCの壁紙にしてみましたよ。起動するたびに思わず頬がゆるんで、なんともイイ感じです。しかも数日後にささやかな臨時収入があったり。これは期待できるかも!?

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大黒様の足元には、愛らしいお使いのネズミが2匹。これも同じ木から生み出されたそうです。今にも動き出しそうな生命感が、それこそ左甚五郎みたい。細かいところまで行き届いた飛騨の匠の技。どの作品にも、見れば見るほど見飽きさせない力があります。開運乃森大七福神は、甚五郎と円空のふるさと、飛騨の心を現代に五感で伝えてくれる密やかな発信基地なのかもしれません。

2014年10月01日掲載分28
神社仏閣じゃないけど御朱印もちゃんとあります!ハンコをたくさんちりばめるのは飛騨の紙絵馬の特徴だったりするので、なにげに芸が細かいなと思いました。すぐ隣の「飛騨の里」では重文建築や合掌造りを含む30軒以上の古民家を見学できたり、さるぼぼや飛騨刺し子など民芸の実演・体験施設も充実。開運乃森大七福神と合わせて、丸一日で古き良き飛騨を満喫できるエリアです。日本の匠の技と心は飛騨にあり。大正の文化人にも愛された飛騨のモノつくり魂、ぜひ一度浸ってみてください。そうそう、合掌造りといえば、白川郷も高山駅前からバス一本で行けるので、プランに組み込むと良いかもです。

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●飛騨開運乃森大七福神
≪アクセス≫
・JR高山駅隣の濃飛バスセンターより「さるぼぼバス」約10分「飛騨の里」下車徒歩2分
岐阜県高山市西之一色町3-2021
0577-33-3317
拝観料:中学生以上500円 小学生100円 小学生未満無料
3月~11月:無休 AM8:00~PM5:00
12月~2月:不定休 AM8:30~PM5:00
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鏑木麻矢

Author:鏑木麻矢
文筆家。現在、初の著書を執筆中。2012年5月から2014年12月まで、㈱H.I.S.公式ブログとして「麻矢の不思議カワイイ!?ご利益モノがたり」連載。現在、当ブログ内にすべて再録。縁起物をこよなく愛する。巷間の多種多様なおみくじを収集・研究中。絵馬コレクターでもある。かつて、仏像マニアのテレビ番組に出たことも。全ては神社仏閣・仏像巡り趣味から始まっている。旅と町歩き・路上観察、手仕事なモノ(郷土玩具、民藝)、美術鑑賞(月に最低2回位は美術館博物館に行くのが癒し)、古風なもの、レトロな雰囲気などが好き。何にせよ、知られざる面白いモノゴトを自分なりに発見していきたいです。他、天然石・鉱石やトランプ・カード等、気まぐれかつ雑多な収集癖あり。以前、下手の横好きでオペラを習ったこともあったり(今も観賞大好き)。何でもとことんハマるのが生き甲斐(悪癖?)。

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