おみくじ参考文献ゆるゆるレビュー

ここ二年くらい、どういうわけか、メディアでおみくじについて尋ねられることが多くなってきました。特段、専門家というわけでもなく、単に各所でおみくじを引いては集めつつ、路上観察的/考現学的な感じで個人的にゆるく(時には真面目に…!?)愉しんできただけのことなんですが、ともかくそんなときはわかる範囲でお答えしています。

自分の足で見つけてきたことや誰かにきいたことなど有用そうな独自情報と思われるものはもちろんなるべく多く盛り込めるよう心がけていますが、一般的なおみくじ豆知識や、特におみくじのルーツに関することなどについては大体、以下の本を参考にしてることが多いです。この際なので、独断と偏見でゆる~く紹介します。



「日本おみくじ紀行」
島武史 ちくま文庫

私がおみくじを行く先々で引いてみるきっかけとなった本。当時、私自身たまたま巣鴨のとげぬき地蔵でちょっと面白い内容のおみくじを引いてしまい(下の写真)、以来おみくじというものが気になり出していたところ、ちょうど出会ったのがこの本でした。

あのときの↑とげぬき地蔵のおみくじに書かれていた気になる文言とは、「五十六十(←注:年齢)は鼻たれ小僧との気概を持って」「枯木に花が咲くのたとえで」というものです。お年寄りの街だから、おみくじも対象年齢を絞ってきてるのか!?と急に興味をおぼえました。場所に合わせて個性が出てくる面白さ。他にもそういうことってないのかなー、とうすうす思っていたのですが、この本に載せられた各地のおみくじを見て、それは確信に変わったのでした。以来、自分でも、おみくじを各所で収集する癖がついてしまったという思い入れ深い一冊。

ただ、難点としては、如何せん、情報が古い。この本は、この寺社ではこんなおみくじが引けます的なガイドブックとして編まれたものなんですが、現地を訪れても今はもうないというケースが結構多いです(マイナーチェンジくらいならまだいいほうで、悲しいのは業者製汎用のものに置き換わってしまったパターン)。そんなわけだから、昔はこんなんもあったのか、という参考にはなりますが、気が付いたら実際全くあてにしないで勝手に探し歩いてる自分がいました。この本が発売されて間もない頃に買っていたはずですが、当時からしても既に情報が古かったです。

おみくじって案外、生モノ。古風なものが減り業者製(特にオマケ付き)が増えたのは時代の流れと諦めるにしても、汎用ではなく、その中でその場ごとの特色を出してくれたほうが、おみくじウォッチャーとしては嬉しかったりします。そんな想いはおそらく共有しつつも、新事情までは全然フォローできてません。著者自身、実は業者製汎用なものを当地オリジナルと混同して載せてしまっているケースも散見。現在はよく見かけるタイプのおみくじでも、当時としては目新しく珍しかったということでしょうか。まあ仕方ないか。古いし。それに、実を言えば私自身も、そこを見分ける難しさには困惑し通しなのです。

それにしても、この著者の取材の丁寧さは脱帽もの。ご自身が何度も足を運び、誠実につながりを築き上げ、敬意を持って話をきいてくる、というスタイルは、特に今時では、なかなかできるものではありません。色んな意味での時代感も、資料としてオイシイ一冊です。



「一番大吉!―おみくじのフォークロア 」
中村公一 大修館書店

おみくじの歴史について、詳細な研究をもとに書かれた最も読みやすくかつ信頼の置ける本。特に、著者が中国史の専門家だけあって、漢文おみくじの中国での発展の経緯についてかなり詳しいです。易占いとの関連性にも踏み込んだ言及あり。そして日本への伝来と受容についても、それ以前にあった日本のおみくじ的なものを踏まえた上で、的確に網羅されています。

今の日本の漢文おみくじで最もメジャーな「元三大師百籤」についても、ぼんやりとした一般的な認識を越えて深く掘り下げられているので、ちゃんと知りたい人には絶対オススメです。それに、見慣れない漢文のおみくじを見て何だこれと思ったときには、この本を参照すれば大抵は何だかわかります。日本古代からの辻占・歌占の流れと江戸時代におけるそのポピュラー化についても触れられているのはさすが。現代日本のおみくじを理解するには元三大師百籤だけではなく、これらについて語らなければ不充分だと私も思います。素晴らしい本です。



「福を招くお守り菓子」
溝口政子 講談社

お守り菓子とは著者の造語で、いわばお菓子でできた食べられる縁起物。色とりどりで形も愛らしく、眺めているだけでほっこりしてきます。この本の元になったwebサイト「いとおかし」も素晴らしいです。著者が全国を巡って集めた、美しくも密やかな日本の古きよき習俗が集大成されています。

で、この本の何がおみくじと関係あるのかというと、(意外にも)フォーチュンクッキーのルーツである、日本の辻占菓子・辻占煎餅をめぐる歴史と文化について詳しいということです。それって何なのか一言で言えば、ゆるいおみくじが入ったお菓子。これだって、やっぱりおみくじです。ちょっと「点取り占い」っぽくもあるような。謎な言葉や艶っぽい文句を軽く面白がるものもあれば、何が出てもちょっと幸せな気持ちになれる縁起の良いものもあり。むしろ現代人が旅先で軽く引くおみくじは、こっちのメンタリティに近いんじゃないかと私は思っています。



「江戸の占い」
大野出 河出書房新社

現代にかなり先駈けて、大衆に空前の占いブームがやってきたのは江戸時代のこと。ちょうど時を同じくする巡礼ブームや流行り神ブームなんかは、ほとんどパワースポットブームじゃないですか。日本人の神々をめぐるレジャーの感覚って、この頃から連綿と続いてきているものだと思います。

この本で触れられているのは、安倍晴明占い、夢占い、人相占い、そして、おみくじ。ほらほら、何だか親近感がわいてきませんか?

中でも特に、江戸時代のおみくじについては詳細なデータに基づいてかなり詳しく言及されています。同じ筆者の作に、元三大師百籤に関する専門書(後述)もあるくらいなので、相当なものです。当時の図版も豊富で、そうした占い本に特有のへろい素朴絵を眺めているだけでも楽しくなってきます。



もっともっと掘り下げまくりたい向きには、
「元三大師御籤本の研究」大野出 思文閣出版
「辻占の文化史」仲町泰子 ミネルヴァ書房
の二冊があります。かなり専門的な学術研究書です。

以上、おみくじについて深く知りたい人に、少しでも参考になれば幸いです。
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鏑木麻矢

Author:鏑木麻矢
文筆家。現在、初の著書を執筆中。2012年5月から2014年12月まで、㈱H.I.S.公式ブログとして「麻矢の不思議カワイイ!?ご利益モノがたり」連載。現在、当ブログ内にすべて再録。縁起物をこよなく愛する。巷間の多種多様なおみくじを収集・研究中。絵馬コレクターでもある。かつて、仏像マニアのテレビ番組に出たことも。全ては神社仏閣・仏像巡り趣味から始まっている。旅と町歩き・路上観察、手仕事なモノ(郷土玩具、民藝)、美術鑑賞(月に最低2回位は美術館博物館に行くのが癒し)、古風なもの、レトロな雰囲気などが好き。何にせよ、知られざる面白いモノゴトを自分なりに発見していきたいです。他、天然石・鉱石やトランプ・カード等、気まぐれかつ雑多な収集癖あり。以前、下手の横好きでオペラを習ったこともあったり(今も観賞大好き)。何でもとことんハマるのが生き甲斐(悪癖?)。

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