「MEMO男の部屋」絵馬特集

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この雑誌は、私が絵馬を集め始めて間もない頃にちょうど出たもの。現在、絶版である。

うれしいことに、水木しげる御大の書き下ろした鬼の絵馬が付録についている。これはもう、すでに蒐集熱に取り憑かれていた私としては買わないわけにはいかない。そしていまだに、もったいなくて開封できなかったりしている(笑)。まァ、セロファン張りの窓から中身が見えているし、紐を通す穴もないから飾りづらいので、これで充分という気もしなくもないのだが。

また、読者プレゼントで、埼玉県比企群嵐山町の鬼鎮神社で出している、このユーモラスな鬼の絵馬までいただいてしまった。鬼を祀る神社という禍々しさに、「必勝祈願」の文字がたのもしい。

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付録の絵馬も、この絵柄をもとにして描かれたもの。この鬼鎮神社の絵馬は、絵馬札といって、絵馬掛け所に願い事を書いて奉納するのではなく、持ち帰ってお札のように扱うことができる。この神社のある地域では、伝統的に、家々の玄関などに魔除け・厄除け・火伏せのお守りとして提げられてきた。

なぜ鬼を祀るようになったのかというと、鎌倉時代の畠山重忠という武将が立てた菅谷城の鬼門に当たるからということだ。恐ろしい鬼をあえて神として祭り上げることで、その見返りとして、おとなしくなってもらうばかりでなく、逆に力を与えてもらおうという発想である。いかにも武士らしい、常に自らが鬼と化して生死を賭け続ける中での、ある種開き直った生き方が感じられる。この神社の鬼の力をたよれば戦に必ず勝つと、長いあいだ信仰をあつめてきた。現代社会でも、人生は日々が競争と戦いの連続、という人は多いだろう。むしろ見かけ上は殺し合いがないようでも、もっと殺伐とした世界と言っていいかもしれない。そんな中での「必勝祈願」「人生必勝」というわけだ。

本の中身も素晴らしい。各地で手作りされた大絵馬・小絵馬がカラーで大写しされ、様々な使われ方が紹介されている。ちょっとした絵馬図鑑だ。縁切り祈願に断ち物祈願、果ては未婚の死者に架空の結婚相手を捧げて冥福を祈る「むかさり絵馬」まで・・・ひとつひとつの項目に、祈願する人々の情念がかもし出す生のエネルギーのほとばしりを垣間見てしまう。

それらと並んで、一件のお店が紹介されていた。都内、湯島のほうにある「祈願堂」という居酒屋。店主が全国を駆け回って集めたという珍しい絵馬で壁一面が埋め尽くされ、「奥の院」では毎夜マニアが絵馬談義に花を咲かせるという。研究者などもよく取材に訪れたりするようだ。この本で見てからというもの、この店を訪れて実際に絵馬談義するというのが数年来の念願だった。これを先日、ついに叶えてきた。その様子は、祈願堂で。
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鏑木麻矢

Author:鏑木麻矢
文筆家。著書「ニッポンのおみくじ」(グラフィック社刊)もうすぐ発売。2012年5月から2014年12月まで、㈱H.I.S.公式ブログとして「麻矢の不思議カワイイ!?ご利益モノがたり」連載。現在、当ブログ内にすべて再録。縁起物をこよなく愛する。約20年来、巷間の多種多様なおみくじを自らの足で歩いて独自に収集・研究中。絵馬コレクターでもある。かつて、仏像マニアのテレビ番組に出たことも。全ては神社仏閣・仏像巡り趣味から始まっている。旅と町歩き・路上観察、手仕事なモノ(郷土玩具、民藝)、美術鑑賞(月に最低2回位は美術館博物館に行くのが癒し)、古風なもの、レトロな雰囲気などが好き。何にせよ、知られざる面白いモノゴトを自分なりに発見していきたいです。他、天然石・鉱石やトランプ・占いカード等、気まぐれかつ雑多な収集癖あり。以前、下手の横好きでオペラを習ったこともあったり(今も観賞大好き)。何でもとことんハマるのが生き甲斐。

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