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拝み絵馬で、祈りよ届け!

名だたる絵師の手になる大絵馬が豪華さを競うようになっていく裏では、庶民が切なる願いを託すための小絵馬も、着実にバリエーションを増やしていきました。人々のニーズに合わせて、色々な絵柄や形が生み出されていくというのは、今に至るまで同じ。

 

次回からはそういったバラエティ豊かな絵馬を1枚ずつ読み解いていきたいと思いますが、その前に、もうひとつの裏スタンダードと言うべき絵柄をご紹介しておきます。

 

 

祈る人物の姿は、いわば願い事をする人自身の分身。絵馬が機械で大量生産されるようになる以前には、庶民が神仏に奉納する絵馬としては最も一般的な絵柄と言っていいのがこれでした。馬と並んで、どんな神仏にも、どんな願い事にも使えるオールマイティーな絵柄。かつては、女性だけでなく男性、あるいは夫婦、家族などを描いたものもあり、このような絵柄は「拝み絵馬」とよばれています。

 

こうした手作りの絵馬が主流だった頃には、今のように願い事を文章にして書くということはありませんでした。それは神仏と自分だけの秘密で、絵とそこに込められた思いが神仏に直接メッセージを運んでくれると信じられていたから。名前も書かずに、年齢と性別だけが書き添えられていました。今でいうプライバシー保護的な効果もあったのでしょう。

 

上の絵馬は、今でも入手することができます。これを売っている場所がオドロキ。東京都府中市の大国魂神社の道路を隔てた向かい、「フォーリス」というショッピングセンターに入っている「中万」という文房具店なのです。旧甲州街道開通から続く老舗だそうです。文房具以外にも雑貨の豊富な楽しいお店でした。その一番奥の棚の片隅に、会計などに使うお堅い用紙と並んで、手作りの絵馬の束が!

 

この絵馬は、大国魂神社の境内にある宮之咩神社(みやのめ神社)に奉納されることが多いです。ここは安産のご利益で密かに知られており、御礼参り用の絵馬もあります。

 

 

無事産まれたということで、赤ちゃんが描き加えられていますね。こんなふうに、願い事を絵だけで伝えるというやり方もあるというわけです。現在、願い事は文章にするのが主流ではありますが、無地でもない限り、絵や形にも一定の役割があるはず。こうしてそこに込められた意味を見ていくのが、絵馬の面白みだと私は思います。

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鏑木麻矢

Author:鏑木麻矢
文筆家。著書「ニッポンのおみくじ(グラフィック社刊)」発売中。2012年5月から2014年12月まで、㈱H.I.S.公式ブログとして「麻矢の不思議カワイイ!?ご利益モノがたり」連載。現在、当ブログ内にすべて再録。縁起物をこよなく愛する。約20年来、巷間の多種多様なおみくじを自らの足で歩いて独自に収集・研究中。絵馬コレクターでもある。かつて、仏像マニアのテレビ番組に出たことも。全ては神社仏閣・仏像巡り趣味から始まっている。旅と町歩き・路上観察、手仕事なモノ(郷土玩具、民藝)、美術鑑賞(月平均2回以上は美術館博物館に行くのが癒し)、古風なもの、レトロな雰囲気などが好き。何にせよ、知られざる面白いモノゴトを自分なりに発見していきたいです。他、天然石やらトランプ・占いカード類やら喫茶店マッチやらと、気まぐれかつ雑多な収集癖あり。以前、下手の横好きでオペラを習ったこともあったり(今も観賞大好き)。気になったらとことんハマるのが生き甲斐。

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