【特別編】桐生「芭蕉」に絵馬と棟方志功の壁画を訪ねて・其の弐

序章
其の壱

 


 


 


入ってすぐにわかる部分だけでもあれだけ面白い空間だというのに、さらに奥があるなんて「芭蕉」の底知れなさは想像を超えていました。


 



 


帳場と階段を隔てた向こうには、今でこそ鹿威しは止まっているものの「かけひ」があり、さらに奥に階段があったり、隠れ家を思わせる背の低い引き戸がいくつもひっそりとあったり。そして、いたるところに古民具が置かれたり吊るされたりしている様子は、そのさりげなさが田舎のおばあちゃんの家のようでいて、その古さと数や種類の豊富さは民俗学の博物館さながらです。


 


そんなところで、「絵馬堂」仲子さんの描いた桶を発見!躍動感あふれる白い馬が外周にぐるりと何匹も描かれていて、その様子はさながら走り回ったり飛び跳ねたりしているかのようです。


 



↑仲子さんが馬を描いた桶。 


 



「芭蕉」先代店主の小池魚心さんは自身が午年生まれということもあって馬が大好き。お店の全体的なテーマも、馬小舎をコンセプトにしているというこだわりよう。それで絵馬にも関心を持たれたというわけ。現店主の小池一正さんも大の絵馬好きなので、谷中の「絵馬堂」とはお互いに行き来があったのです。


 


桶の飾ってある場所からふと見上げれば、荒々しい筆致で一頭の走る馬を描いた大きな絵馬が。こちらはかつて芸大の学生さんに描いてもらったとのこと。迫力ある一枚。


 


↑二つの大作。左上が現店主の作品。


 


そのすぐ左上をさらに見上げるとまた、馬の往来する賑やかな街並みをモノトーンで丁寧に描いた大作が掲げてあります。よくよく見るとその隅にはK.Kazumasaと銘が入っていて、現店主の作品であることがわかりました。きけば、これは版画なのだそうです。一見すると版画とは思えないほどの繊細さに息をのみつつ、世界のどこかの見知らぬ街への旅に思いは誘われていきます。


 


それにしても、この一角だけでも、馬というイメージへの思い入れの強さと、それをめぐる人々のつながりが濃厚に感じられるのには畏れ入るばかりでした。


 


そしてその奥には、「絵馬洞」と書かれた、どこかのお寺の「奥の院」の洞窟の入り口を思わせるような背の低い引き戸が。頭上に注意しつつ、わくわくしながらくぐります。


 



↑「絵馬洞」入口。


 



↑入口をくぐり、部屋へ至る通路。


 


そして細い通路を抜けると、そこはヨーロッパの山小屋のようでいて古きよき日本の田舎のあたたかな息吹を感じるようなファンタジックな世界。入ってすぐ右脇の台の上には東北のものらしき馬の鞍がでんと置かれ、部屋の真ん中には囲炉裏が構えているものの、造りはあくまで西洋の暖炉部屋風です。


 



↑鞍。


 



↑囲炉裏。


 


薄暗くやわらかい光の中に置かれたランプや木馬が心を和ませます。飾り棚には、馬と人物の織りなすさまざまな情景をあらわした陶製の人形がずらりと並ぶさまも圧巻。もしかするとこの空間自体が、ひとつの大きな絵馬の中ということなのかもしれません。


 



↑「絵馬洞」部屋の様子。 



迷路のように入り組んだ店内では、他の部屋にも「みちのく」などといったタイトルがついていて、すべて入り口は低くなっています。先代も現店主も茶の湯を嗜んでいたということから、頭を低くして入ることで礼の気持ちを起こさせるものとされている「にじり口」という茶室の入り口をイメージしたのでしょう。また、これをくぐることで非日常の世界へと移行することも意図されているように思います。


 



↑「みちのく入口」


 



↑どの個室も入口の扉は低い。


 


 


↑建物の中なのに、独立した一軒の茶室があるかのよう。


 


各部屋には、中国や朝鮮で魔除けにされた十二支石板のうちの馬頭人身の像や、庚申様を祀る厨子といった小さな神様たちも。例によって、それらの両脇には燭台と大きな蝋燭が置かれています。これはとりもなおさず、聖なる空間の演出。素朴な神様のいる理想のふるさと的世界と、茶の湯の「一期一会」という特別な時空を融合させる試みではないかという気がします。


 



↑馬頭観音。


 



 ↑庚申様の厨子。


 



↑庚申様のいる部屋。


 



↑この部屋もまた、茶室風のしつらえ。


 


 


 



↑立体的で複雑な店内。階段の踊り場より。


 


奥の階段を上がると、突き当たりには巨大な羽子板が!


 



 



 ↑階段を上りきって、見下ろした様子。




↑階下にも、なぜか巨大羽子板。


 


低い入り口と高い天井ばかりでなく、こんなところでも自分自身の縮尺感覚が心地よく狂わされていきます。


 


開放的な二階の部屋は、祇園のお座敷を思わせる紅殻の壁。そうかと思えばエキゾチックな布と、床の間に飾られた会津の天神様がまた異次元へと誘います。


 



↑紅殻壁のお座敷風。


 


 


↑会津の天神様と、郷土玩具を描いた額絵。


 



↑こんなエキゾチックな物も所々に。


 


二階廊下の側面の、物置に当たると思われる場所には、馬を筆頭にしたさまざまな民芸品がびっしり。店内いたるところに置かれた古民具・民芸品のひとつひとつに「これはなんだろう」という好奇心が次々わいてきて尽きることがありません。


 



↑ぎっしり。 



そんなこんなで隅々まで行きつ戻りつするたびに、次の瞬間ごとに新たな発見が待っていそうな不思議な希望で胸が満たされるようになったら、すっかりこの世界のトリコです。


次回は、そんな奥深すぎる「芭蕉」の最深奥に迫ります!(其の参へつづく)


 


 


序章


其の壱


↑前回まではコチラ


 


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鏑木麻矢

Author:鏑木麻矢
文筆家。現在、初の著書を執筆中。2012年5月から2014年12月まで、㈱H.I.S.公式ブログとして「麻矢の不思議カワイイ!?ご利益モノがたり」連載。現在、当ブログ内にすべて再録。縁起物をこよなく愛する。巷間の多種多様なおみくじを収集・研究中。絵馬コレクターでもある。かつて、仏像マニアのテレビ番組に出たことも。全ては神社仏閣・仏像巡り趣味から始まっている。旅と町歩き・路上観察、手仕事なモノ(郷土玩具、民藝)、美術鑑賞(月に最低2回位は美術館博物館に行くのが癒し)、古風なもの、レトロな雰囲気などが好き。何にせよ、知られざる面白いモノゴトを自分なりに発見していきたいです。他、天然石・鉱石やトランプ・カード等、気まぐれかつ雑多な収集癖あり。以前、下手の横好きでオペラを習ったこともあったり(今も観賞大好き)。何でもとことんハマるのが生き甲斐(悪癖?)。

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